社会貢献しないと企業価値を失うゴルフ市場への影響は如何に?規則改定で「飛ばないボール」慮型素材をコアに使うと反発性能と重量も課題になります」とはいえ開発領域は広がる。「おっしゃるとおりです。従来は飛距離やスピンなどボール性能が開発の軸でしたが、ここにサステナブルという新たな軸が加わるため、今後は2本の軸で進むでしょう」より広い視野で考えると、SDGsも開発の軸になってくる?「SDGsは開発のカギになると信じています。環境だけではなく『健康的な生活』という項目もありますからゴルフとは深い関連がある。ギア開発にも不可欠な要素です。その意味で今回のボールは、将来に向けての一歩になるはずです」今後「ゴルフと健康」は、業界発展に向けた大きなテーマになってくるが、大濱課長はギア開発からその実現を目指すという。環境に優しい『Zスター』は、その試金石となるかもしれない。 このような挑戦は同社に限った話ではない。BSも前向きに取り組んでおり、ボール企画室の田山俊介課長が語気を強める。「我々はルール改定でエコボールに取り組んでいるわけではなく、以前から研究しています。数年前からスリーブ箱の窓フィルムを廃止したり、環境に優しい紙を使ってます」その流れで今年12月、初めてアウターカバーに植物由来のバイオマス原料を45%配合した『ツアーBXS』を発売する。大阪・関西万博のライセンス商品でもあり、箱には間伐材を原料とした紙を使うなど、環境への配慮をアピールする。「肝心の性能は通常の『ツアーB』と全く同じ。開発コストが高いため実勢売価は若干上がるかもしれませんが、ようやく完成に漕ぎつけました。店頭でもエコ商品であることを訴求していきたい」(田山課長)また、キャスコも早くから環境問題に着目しており、2019年にはバイオマス素材に着目した『バイオスピン』を発売している。開発・企画部門の藤原雅彦部門長は、「今後は廃棄ボールのリサイクルも真剣に考えるべきでしょう。回収したボールは、表面洗浄後に塗装して再利用する方法と、燃料として活用するサーマルリサイクルの2案がありますが、ボールの環境問題は避けて通れない課題です」と、口元を引き締める。これらの課題はメーカーのみならず、市場全体での取り組みが必要だろう。特に、ゴルファーと直に接する店頭で、接客トークや掲示物などは有効に作用するはず。二木ゴルフの岡安トレーナーは、「エコボールへの挑戦は本当に素晴らしいと思います。素材原価の高騰でボールが値上がりし、ゴルファーの意識はロストや廉価品に向いてますが、我々も環境保全の大切さを発信していかなければ」ボール市場の新たな動きに「ワクワクする」と話すのは、ゴルフ5の小口地区長だ。「ルール改定とバイオマス素材の商品化は、市場活性化への期待を含めてワクワクします。上級者にとっては使い慣れたブランドから他社品にスイッチする動機になるかもしれず、エコボール自体に『環境+α』の性能が付けば、新たなヒット要因になると考えられます」と、今後の可能性に期待する。毎年、数多くのニューボールが発売されるが、現状は契約プロの活躍頼みなど、市場を一変させる変革は起きていない。その意味でボール市場は停滞局面が続いている。用具規則の改定は過去、メーカーやゴルファーに紛糾のタネを蒔いてきた。代表例が「高反発規制」で、当時は反対の声が渦巻いたが、その後「脱・高反発」の流れからクラブ調節の機能が生まれ、店頭でのフィッティングが普及するなど「規制」を梃子に進化してきた。今回の規則改定で環境問題への取 を進める上で、エンジンの役割を果り組みが本格化すれば、ゴルフ界にとっては大きな前進となる。そう考えれば「飛ばないボール」は、逆風ではなく、ゴルフ界がSDGs活動たすかもしれない。029DECEMBER 2024
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