品を買い、それをもらったキャディは換金してチップにする。雨天時には「荒天手当」など、それなりに厚遇される職業だった。バブルが終わり、外資系ファンドが民事再生のゴルフ場を束ねて傘下に収めると、ゴルフの大衆化が訪れる。セルフ化の波が押し寄せ、簡易な距離計測器も普及して、セルフプレーが定着した。とはいえ、キャディ付きプレーを重視するゴルフ場は多い。高度経済成長期に「社用ゴルフ」で腕を磨いた70歳以上の高齢者は現在、延べゴルフ場入場者の25%ほどを占める。時間と資産に余裕があるこの層はゴルフ界の上顧客で、キャディとの会話を楽しみながらのんびり歩く。客単価向上を目指すゴルフ場が、キラーコンテンツのひとつにキャディを位置づけるのも頷ける。首都圏に3コースを運営する関文 「当社は会員との家族的な付き合いグループは、旗艦のGMG八王子(都下、27H)に社員の正キャディ48名、準キャディ19名を雇用するが、その狙いを森川英幸社長は、を重視しており、究極はメンバー来場率100%を目指したい。キャディは来場者とのコミュニケーションを図る大事な存在で『あのキャディがいるから会員になりたい』という人もいるほどです」他コースに比べ「社員キャディ」が断トツに多いのは、経営ポリシーの表れでもある。値段重視のゴルファーにとって一人数千円のキャディフィは負担だが、高齢者や接待ゴルフにキャディは欠かせない。安くて大量の客を入れるのか、それとも高付加価値・高収益を目指すのか? 略とも密接に関わってくる。キャディフィは来場者一人当たり3000~4000円が相場だが、仮に4000円で4バッグの場合、1万6000円の収益が出る。「ただ、キャディフィだけの収支は福利厚生があるので赤字です」と、森川社長は話す。給与計算は「バッグ数」がベースになるという。月間25日出勤で毎日4バッグなら100バッグ。これに来場者の評価等を加えて基本給+報償の形になる。稼ぎ手は月40万円を超えるというが、求人統計データによれば、キャディの平均年収は342万円。給与所得者の平均年収461万円(男性567万円、女性280万円)を下回るが、女性の平均をキャディは経営戦軽く超える。そのキャディが、全国的に不足している。異業種との争奪戦も熾烈を極め、食品スーパーのコストコが「時給1500円~」を発表したのは昨夏の話。ショッピングモールが従業員用の送迎バスを運行するなど人材確保に力を入れる。総じてゴルフ場の旗色はわるい。キャディ不足は、職種自体に起因すると見るのが熊谷GC(埼玉、18H)の岡田正一支配人だ。同コースは1961年の開場で、全盛期は60名のキャディが在籍したが、現在は派遣等)に減少しており、「女性には大変過酷な仕事です。夏は暑いし紫外線も浴びる。平均年齢はセルフプレーが増えたので若者に仕事内容が伝わりにくい。それも一因だと思います」会員数は980名と少ないが、セルフとキャディ付きを併用する中で会員は後者を望むケースが多い。「ビジターはカートナビの利用者が増える傾向ですが、競技志向の会員はキャディ付きを希望します。月例でキャディが足りない場合はセルフプレーをお願いしますが、特に春と秋のコンペではキャディ需要が殺到する。単価的にはセルフが安く、利益率も良いのですが、会員の意向を考えるとキャディは必要というのが現時点での判断です」地元の求人広告やネット、ハローワークで募集するほか、新卒の会社説明会にも顔を出す。近隣の高校ゴルフ部と提携して数名のアルバイトを確保したが、応急処置的な対応に過ぎず、恒常的な確保には、「待遇の改善が必要でしょう。住み込みで働ける環境や、託児所など福利厚生を整える必要がある」そこまで覚悟できるのか? の情勢を睨みつつ、岡田支配人の思案はつづく。同じく埼玉の飯能GC(18H)はメンバーシップの強さが特徴だ。原則はキャディ付き歩行プレーで、スタートは到着準。会員の2割が予約なしで来場するとか。パート含め42名のキャディが在籍するが、天気次第で来場者が上ブレするため、「キャディの備えが難しいんです。繁忙期は予備キャディがあと4、5名将来人手不足と休日の確保で四苦八苦50歳超で、全員女性ですが、近年は20名(正社員14名のほかパートOB・027
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