しいので、キャディの定着率も向上する。キャディ室の雰囲気が明るくなってコミュニケーションも活発になる。そこを目指しています。最後に具体的な「評価」です。自分の仕事が正当に評価されていないと思うキャディは以前、沢山いました。評価は、評価自体が目的ではなく、従業員の満足度を高めることが目標なので、公平で透明性が高い制度設計を目指し、給料に反映されるようにしました。お客さんからの評価は毎月ランキングを出して、上位5名に毎月報償金を出しています。金額は多くないけど、表彰されるとやり甲斐が生まれます。評価項目にはアンケートの回収率も含みますが、これが低いキャディは基本、評価の低さに直結します。それ以外に勤続年数や出勤率、遅刻、「指定出勤日」もありますが、これはお客さんが多くて出勤してほしい日を我々が指定します。これらで総合評価をSS、S、A、B等に分類しますが、SSとBではボーナスが10万円以上変わる感じです。パート・アルバイト・派遣は別ですが、弊社に所属する人は全員ボーナスの対象になります。こういった活動の結果、従業員満足度は以前の3から4ポイントを超えました。満足度が高まって私が一番大きいと感じるのは、口コミや紹介の入社がめちゃめちゃ増えたこと。弊社のキャディの3~4割はほかのゴルフ場で働いてましたが、泉ヶ丘CCは労働環境が良いという噂を聞いて、実際に働いたら評判通りということで、かつての同僚が入ることもあるんです。もちろん弊社から声を掛けることはなく、引き抜きも一切ありません。キャディ業務にチームワークはあ まり関係ないと思ってましたが、グループワークでベテランキャディが新人に教えてくれる、新人がベテランに相談できる。そんな関係ができて、キャディ業務はチームワークが大事との理解が深まりました。一度好循環になると、どんどん満足度が上がります。従業員満足度が上がるとサービスの質が上がり、リピーターが増えて客単価が上がる。来場者数もアップする。給料もボーナスも増えるので、定着率が高まって応募者も増えていきます。6年前に着手して、成果を実感できたのは2年前から。以前のキャディは70人ほどで、ここまで増えたのはキャディ・マスターやキャディ課の努力がとても大きいです。まとめに入ります。他のゴルフ場さんが見学に来て驚くのは、実はキャディをマネジメントする人数の多さなんです。正社員5名、パート1名が担当して、この人たちがスタート室を回しながらミーティング・研修も担当する。人手をかけて、努力を重ね、初めてキャディの満足度が上がっていくということです。年間来場者は6万人で、セルフ営業は月曜だけ、それ以外は全部フルキャディです。キャディ付きラウンドは年間5万人ほど、キャディフィの総売上は3億円ちょっとで、そのうち2億円ほどがキャディの給料。残り1億円の5000万円くらいがキャディのマネジメントコストや、表彰の報奨金、ボーナスや研修・ミーティング費用のイメージです。正直、セルフプレーのほうが儲かるんです。客単価はセルフのほうが低いけど、利益率はセルフが圧倒的に高いですから。なので、ゴルフ場は個々の事情に照らし合わせて、キャディ付きで運営するメリットは何か、キャディを維持する合理性や将来性、戦略について真剣に考えるべきでしょうし、経営者のビジョンや覚悟が問われると思います。泉ヶ丘CCは立地条件が非常に恵まれています。会員権も高額だから「質の維持」を求める会員さんが多いんですね。あとは泉ヶ丘カントリークラブのブランド力を上げていくこと。周辺コースがどんどんセルフ化する中で、キャディ付きを維持できる条件があり、そのビジョンと覚悟があるゴルフ場はどれくらいあるのでしょうか。経営者が覚悟とビジョンをもつことが、実は一番大事なことだと思っています。経営戦略の視点で キャディの存在を考えるゴルフ場の雇用環境キャディ不足を考える031
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