らずも「こけら落し」になった格好だ。ヤマハは8月、前月に都内から横浜のみなとみらい地区に移転した首都圏事業所で『インプレス』の記者発表を行った。報道陣約100名を集め、山浦敦社長ら経営陣も登壇、久し振りに気合を入れた。ゴルフHS事業推進部の本村芳治部長が語気を強める。「移転して、初めての発表会がゴルフでした。コロナ以降、新商品は展示会での発表など地味でしたが、今回は新オフィスへの移転やゴルフ事業への本気を含め、経営トップに登壇を要請したのです」首都圏に点在していた事業所を一堂に集約、社員約1000名が勤務する新オフィスで、山浦社長は、「新たな価値を創造していきます」同じく登壇した山口静一常務(楽器・音響事業本部長)は、本誌の取材にこう答えた。以下、一問一答。移転の目的を教えてください。「1か所に集まることで社内交流が密になります。この地区は村田製作所やソニーなど技術系企業が多いので、周辺企業との関係を深めて『共創』の可能性も広がるはず」ゴルフ事業の存在意義は?「弊社は7事業部、1推進部(ゴルフ)、1事業会社(子会社)で構成され、楽器、音響機器、半導体等を手掛けますが、スポーツはゴルフが唯一です。ヤマハの事業は『飛び地』と言われるものの、顧客は多様な年齢で男女の分けがない。そこに楽しみを提供する文化企業なので、まさにゴルフは最適な事業です」ゴルフと他事業の相乗効果は?「特に研究開発とマーケティングに価値を認めます。例えばピアノの内部フレームは鋳造ですが、そのような加工技術をゴルフにも使える。また、ゴルフ市場は欧米企業のパワーマーケティングが目立ちますが、全社的に参考になります」前期売上4628億円の同社にとって、ゴルフはその他事業(365億円)に含まれる小部隊だが、多様な役割りを期待している。記者発表は『インプレス・ドライブスター』(男性2、女性1機種)のニューモデルが主役で、特徴はドライバーフェースに64層の「8軸積層カーボン」を採用したこと。三菱ケミカルとの共同開発だが、マーケティンググループの宮内寿主事は社内リソースの活用について、「弊社の研究施設を使って他社のカーボンフェースを燃やしました。樹脂を溶かし、炭素繊維の組み方、積層等を調べるためで、社内リソース活用の一例です。ほかに感性工学の専門部署もあり、打音を含めた感性面も商品に反映しています」と、山口常務の話を裏付ける。発売は9月20日、ドライバーは9万7900円(税込)で国内2万5000本が目標だが、前出の本村部長は販売戦略に新機軸を持ち込んで、反転攻勢を胸に秘める。「久し振りに登場感を演出できました。その勢いで、販売店の試打ラウンドを全国で約10回行い、改めて関係強化を図りたい。その上で①サブスク、②自社EC、③東南アジア市場開拓を進める方針です」定額を毎月支払うことで新製品が使用できるサブスクは、どのクラブメーカーも及び腰だが、そこに着目して囲い込みを図る。定価販売の自社ECは、今年4月、利益確保を目的に5名の専門部署を設けた。韓国頼みの海外市場は、タイとインドネシアに本腰を入れる。国内メーカー復活の、先陣を切るか? 図 (片山)032ヤマハ新オフィスのエントランス首都圏本部を横浜に集約ゴルフ事業への「本気」示すGolf MakerGolf Maker
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