GEW9月号
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リップ市場の勢力図が、大きく変わるかもしれない。本誌7月号で既報(VIPの視点)のとおり、スチールシャフトで世界最大手の米トゥルーテンパー(TT)は、同社初のグリップ『ICON』(アイコン)を日本で発表した。日本法人トゥルーテンパースポーツインクジャパン(TTJ)の伊能新吾社長は、「来年の発売を目指していますが、春なのか、年末なのか、詳細は未定。決まっているのは商品名ぐらいで、スペックも今後細部を詰めます」とはいえ、グリップメーカーにとっては激震のニュースと言える。特にグリップ市場最大手のゴルフプライドは穏やかでいられないはず。7月下旬、TTJは都内でカーボンシャフト『プロジェクトX ナリ』の発表会を開催。その終了間際に伊能社長がサプライズとして『ICON』をお披露目した。外見からは、ゴルフプライドの『ツアーベルベット』を意識していることが明らかだが、同氏はグリップ市場参入の経緯をこう話す。「コロナ禍で、グリップとシャフトが世界的に欠品しました。そのとき大手クラブメーカーから、グリップディを作ってほしいと依頼されたのです。ただし、コロナが終われば欠品も終わる。それで二の足を踏んでいたところ、大手クラブメーカー2社から『数年間ギャランティする』と確約され、踏み切ったのです」開発に2年半かけ、米PGAツアーで試作品をテスト中。昨年夏に稼働したメキシコ・ティファナのカーボンシャフト工場で、グリップを製造していく。従来、カーボンシャフトは中国工場で製造していたが、コロナ禍でチャイナリスクが高まりメキシコに移転。グリップの製造ラインを確保できた。グリップやシャフトなどのクラブ部品は、米ツアーでの評価が売れ行きに影響するため、「世界には多くのシャフト・グリップメーカーがありますが、TTが発売する製品は、米ツアーで定着する品質とパフォーマンスが大前提。その完成度によって、グリップの発売時期が決まると思います」当日は、米本社のマーケティング       グ  責任者ドン・ブラウン氏が駆けつけて、こう話した。「このグリップは環境に配慮して、精密な金型でバリが極力出ないようにしています。製品特徴について付言すると、世界一のグリップと比べて表面の溝部分の数が多く、軟らかいグリップになる予定です」遠回しに宣戦布告された形のゴルフプライドは、シェア2位のラムキンに比べて5倍の出荷量と見られている。そのラムキンを今年5月、パターグリップで地歩を固めたスーパーストロークが買収して子会社化。これに伴い、ラムキンは人員削減に踏み切り、同社をやめた技術者がTTへ移籍したとも囁かれる。その真偽はともかく、気になるのは米国のクラブメーカー2社と交わした「ギャランティ」のこと。無論、契約の詳細は部外秘だが、世界のスチールシャフトを席巻するTTが、同時にグリップも提供できるとなれば、ワンセットで大きなアドバンテージを得る。まして脱・中国を進めた米クラブメーカーは、メキシコで製造する流れもある。TTのティファナ工場は、地の利も手に入れたわけだ。来年のグリップ市場はどうなるのか? 逃せない。水面下の攻防が見(吉村)034米PGAツアーでテスト中のグリップ『ICON』グリップメーカーに衝撃スチールシャフトの巨人参入Golf MakerGolf Maker

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